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Nikhil Banerjee

 1986年、55歳の若さでこの世を去ったシタール奏者。音楽に対する情熱を燃やし尽くした生涯だったと思う。
 彼のシタールの音は力強く、明快。ちょうどベナレスあたりのガンジス川のように滔滔と流れ、揺るぐことがない。不断の練習に支えられた完璧なテクニックと歌ごころに満ちた演奏は、ジャズのコルトレーンを思い起こさせる。この人の音楽にめぐり会えたことは人生の幸福だと思っている。現代のジャズに失望している方々には是非お薦めしたい。


 バナルジーのCDはいろんなレーベルから出ているので、各レーベルからそれぞれ一枚ずつ選んでみた。
 これはドイツのChhanda Dharaのもの。このレーベルからは6枚以上出ているが、その中でも極めつけがこれ。端正な演奏はまさにクラシック。2曲目、3曲目が特にいい。憂いを含みながらも風のように軽やかに歌いきるシタールの音色。彼のエッセンスが詰まっている。
 笑われる事を承知で人類の遺産と断言したい。



 印度グラモフォンから出ていて、日本ではオルターポップが「インド古典音楽集成」というシリーズで配給している中の一枚。小日向英俊氏の詳しい解説つき。バナルジーの没後編集されたアルバムで、4曲が収められている。1曲目が1966年、2、3曲目が1973年の録音と思われる。。
 どれも粒ぞろいだが中でも一曲目、低音弦のミーンド(チョーキング)からはじまるアラープ(独奏)にぐいぐい引き込まれてしまうし、後半のクライマックスにかけての激しさにはただただ唖然としてしまう。ここまでの道のりにはおそらく血のにじむような修練があったことだろう、聴く者の目には涙がにじむ。壮絶。



 これはLPレコードでも出ていた名盤。1983年の録音。レーベルはフランスのSONO DISC。ただ曲の前半と後半が逆に入っている。レコードのときもそうだったし、CDになってもそれが改められていない。フランスの物にしてはお粗末。
 しかし演奏は第1級。世界(自己)の暗闇の果てを手探りで進むような前半部から、それがいつしか光を求める叫びともとれる後半部まで、張りつめた緊張感で息をつく間もないほど。
 彼にとっては演奏と祈りは同義なのだ。一曲を通した録音としてはおそらくこれがベストワン。



 インド音楽界の新星レーベル、RagaRecordsの発売。現在このレーベルからは10タイトルが出ているが、その中から1970年、アムステルダムで録音されたこの一枚を選んだ。
 彼の演奏は内省的で緊張感のあるものが多いが、このラーガは例外。まるで柔らかい慈悲の光に満ちているかのように平和だ。まさしく生命の讃歌。喜びにあふれている。聴いていると体中のすべてのしこりが溶けていくような気がする。愛聴盤。


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