細い路地のあいだに高くそびえる銀色の煙突。谷中銀座からほど近く、車もろくに入って来られないようなところに銭湯があった。コインランドリーも併設されていてお年寄りが数人洗濯機を回していた。短時間の路地裏散歩なのにこれで2湯目。この地域にはまだまだ銭湯が生きている。
この銭湯、たぶん私が通っていた銭湯だと思います。学生時代、谷中銀座の裏の安アパートに住んでおりましたから。
今でこそ「下町」とか谷中・根津・千駄木を略して「谷根千」とか言って、ほとんどブームの観を呈していますが、あの頃は単に「寂れた地域」以外のなにものでもありませんでした。ああ、寂しかった青春時代、でした。
なんと、そうでしたか。そういうことでしたら話の種にもひと風呂浴びてくるんでした。荷物があったのでつい素通りしてしまいました。
学生のころは中央線、東西線中心に動いていましたから、この地域はまったく知らなかったですね。行動半径がどうしても定期券の範囲に縛られていたんでしょう。
当時は寂れてましたか。でも中央線沿線ですらあの頃は地味な街が多かったと思いますよ。市川さんと同じくあまり華やかな思い出というのはありませんから。