2004年09月03日

怪物のユートピア

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 詐欺師、ペテン師、酔っ払い。戦後の焼け跡、闇市の時代を生き抜いた少年は終生「怪物」を追い求めていた。東京オリンピックから大阪万博へと続く経済成長と近代化の流れも、それとはまったく正反対の裏返しの地点から眺めていたに違いない。
 近代だの合理主義だの。民主主義だの正義だの。あるいは健康とか明るさとか。夢とか希望とか未来とか。そんな言葉の持つ危うさ、胡散臭さをなによりも感じておられたのだと思う(これらの言葉って、今にして思えば「アメリカ教」の布教言語だったといえなくもない)。
 この本は20代の頃、引越しの手伝いに行った時にいただいたもの。ただ田舎から出てきた「近代」青年(ワタシのこと)にとっては難解だった。今なら少しは、、、。
 怪物を追っていた少年はついに自らが怪物となり、これから何度でも甦り続けることだろう。怪物は不死身なのだ。
 種村季弘さん。71歳。合掌。

投稿 : shuzo MARUTA : 2004年09月03日 05:50
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