焼き物における釉薬の役割は二つあって、一つは土表面の凹凸をならし耐久性を高め同時に汚れが付きにくくするという物理的側面。二つ目は表面を装飾する美学的役割。
焼き物を作ったことのある人なら分かってもらえると思うけれども、釉薬を使わずにこの二つの条件を満たすというのは非常に難しくて陶器で成功しているのは備前と朱泥の急須くらい。どちらも土色が濃い。磁器で無釉焼き締めができなかったのは白い地肌に汚れが付きやすく実用にならなかったから。
無釉だと作業の手間が省けて楽だろうと思われがちだが実際は逆。シルクのようなすべすべの地肌、しかも汚れが付かず純白で美しいもの。これを実現するまで10年以上かかった。
はじめは釉薬を使ってつや消しの地肌を作っていたけれどもこの方法では歩留まりが余りに悪すぎて断念。釉薬を使わず無釉で実現できないかと考えてはじめてからは全国の磁器土を取り寄せ色、透明度、焼成温度等のデータをとった。
今では瀬戸、美濃、京都、有田の土を使い、製作のプロセスを数種類組み合わせて作るもの、用途、大きさなどによってそれぞれ使い分けている。(技法はいずれ公開します)。はっきり言って通常の磁器と比べて手間ひま、コストともに数倍はかかってます。