オリエント急行の終着駅だった旧市街のシルケジ駅。駅前はちょっとした広場になっていて大理石が敷かれている。アガサ・クリスティーも歩いたであろうその広場にこの猫はいた。夕暮れ時の雑踏の中、人ごみをものともせず悠然と歩いていた。むしろ人の方が遠慮して遠巻きに歩いているようだった。オヌシはこの広場の主か?そのくらい威厳があった。目が会ったとたんに居ずまいを正し、きちんと挨拶してくれた(たぶん)。鋭い目で瞬きもせず見つめられると「おまえは何者か?」と問われているようで、わが身をこそ揺るがるれ。
数日後、ここを通った時にもまた近づいてきてなにやら言いたげだったな。もしかしたら気に入られちゃったのかも。