焼き物における釉薬の役割は二つあって、一つは土表面の凹凸をならし耐久性を高め同時に汚れが付きにくくするという物理的側面。二つ目は表面を装飾する美学的役割。
焼き物を作ったことのある人なら分かってもらえると思うけれども、釉薬を使わずにこの二つの条件を満たすというのは非常に難しくて陶器で成功しているのは備前と朱泥の急須くらい。どちらも土色が濃い。磁器で無釉焼き締めができなかったのは白い地肌に汚れが付きやすく実用にならなかったから。
無釉だと作業の手間が省けて楽だろうと思われがちだが実際は逆。シルクのようなすべすべの地肌、しかも汚れが付かず純白で美しいもの。これを実現するまで10年以上かかった。
はじめは釉薬を使ってつや消しの地肌を作っていたけれどもこの方法では歩留まりが余りに悪すぎて断念。釉薬を使わず無釉で実現できないかと考えてはじめてからは全国の磁器土を取り寄せ色、透明度、焼成温度等のデータをとった。
今では瀬戸、美濃、京都、有田の土を使い、製作のプロセスを数種類組み合わせて作るもの、用途、大きさなどによってそれぞれ使い分けている。(技法はいずれ公開します)。はっきり言って通常の磁器と比べて手間ひま、コストともに数倍はかかってます。
この花器には花よりも榊のほうが似合うかも。写真に撮って見るとだんだん神棚に似てきたような気がしなくもないな。どっかの神社で大量に買ってくれないかねえ(といっても大量には作れないけど)。
記録と記憶に残る猛暑の夏もようやく終わりに近づいた。昼間はまだ30度を越えるけど夜は肌寒さも感じられるようになってきた。長かったなあ。
今日は午後から真鶴まで来春の個展の打ち合わせ。ギャラリーaTo。熱海湾を一望するすばらしいロケーション。ガンバラナクチャ。
これは今回初めての試み。円錐状の大理石を逆さにしてくり抜いたような雰囲気の花器に山紅葉を植えてみた。幹も枝もまだか細くて頼りないけれどもその存在感は強烈。生きて成長するものの強さ。これは主役を取られてしまったかも。
古代から貨幣の素材は金、銀、銅などの金属が多いけれども焼き物の貨幣はなかったんだろうかと思って探してみたらなんと日本にあった。太平洋戦争末期に金属類が不足したため瀬戸などで作られたとのこと(実際に流通はしなかったようだ)。
粘土に月の印を押しただけのもの。これも考えようによってはコインといえなくもない、月貨?(ただ、実際にコインと言ったら法律上問題が出てくる可能性があるので、ボタンとかアクセサリーと呼ぶ)。
で、たとえばこれを一個500円で売るということは1月貨=500日本円貨の比率で交換するということでもある。これはボタンに限らず湯飲みでも花器でも同じことが言える。展覧会会期中は固定相場制、会期後は変動相場制。今後、高くなるか安くなるかは日本円(日本国)との強さ比べでもあるのだな。
9月に入ってから天気が安定しない。突然の豪雨に雷。今日も午後から雲が広がり夜半まで雷雨。徹夜明けなのに昼寝も出来ず、ぼんやりとしてる間にまた夜になってしまった。
色といい形といい質感といい、何かに似てるなあ、と思っていたらそうだ和蝋燭にこんなのがあったような、、、。しかし安定悪そうだなあ。地震活動期だというのによくこんなもの作るなあ。地震がきたら真っ先に倒れそうだなあ。蝋燭立てが必要かもなあ。一応これ花器なんだけどなあ。
来週月曜日(10日)から銀座のKajimaで展覧会です。ここは何年ぶりかなあ。EXHIBITION